5/20火、27火の2日間に亘って、新セミナー「ニット企画とニット生産の実践」を開催しました。講師は、35年間ニットに携わって来られたニットのプロであるC&J PARTNERS INC. Executive Director・井部清氏です。コーディネーターとして、FBC TOKYOファッションビジネスコーディネーター・山地保氏にもお手伝い頂きました。
山地氏は、次世代のファッションデザイナーを育成支援する目的で東京都が実施しているFDAT(Fashion Designers Accelerator Tokyo)の総合アドバイザーで、今回のセミナーには、都主催の「Next fashion Designers Tokyo」「Sustainable Fashion Design Award」の受賞者などの若手デザイナーの皆様にも大勢ご参加頂き、満員御礼での開講となりました。
講義では、布帛に比べてとっつきにくい印象があるニットの特徴や魅力、国内外の産地情報などから、企画のやり方に至るまでを、編地や二次製品のサンプル、編み機が動く様子を撮影した動画等の豊富な資料をお見せ頂きながら、丁寧にご解説頂きました。
ご参加頂いた皆様からは、
・度目を大きくして縮絨をかけたらメルトンのような素材が出来るのか?
・(横編み)ニットと布帛を組み合わせた商品の場合、布帛の縫製工場が縫いを担当するのか?
・ふわふわしたニットはお客様から「毛がつく」と嫌がられたりする。防ぐ方法は?<以上第1回講義>
・編地が見られるWebサイトはあるのか?
・ニットのミシン縫製は布帛の縫製と同じような縫い方なのか?
・海外でもリンキングが出来るところが減っているとのことだが、今後の見通しは?<以上第2回講義>
上記のような鋭い質問が次々と飛び出し、山地氏が愛用中のデザイナーズブランドのプルオーバーを広げて井部氏に製造方法を尋ねる一幕もあるなど、大いに盛り上がりました。
現在、日本国内のニット生産背景は、自動機2,000台、ホールガーメント約800~1,000台ではないかと言われています。技術者がどんどん減ってきている現状があるのと、日本国内にはサンプル生産のみに対応する機械を置いている工場はほぼ存在しない等の理由から、国内で高感度かつ技術的難易度が高いニットを小ロットで開発生産するのは難しいのではないか?という見方があります。
この現状を打開する方法として、「閑散期を活用し、生産リードタイムを長くとる、デザイナーの立場からの思い、本気度をしっかりと伝えていけば、生産者の心を動かし、新たなニットをクリエイトすることが可能となるのではないか。ひいてはそれが、今後のニット業界の成長や活性化に繋がっていくはず。国内工場と直接やりとりする方法以外に、OEM・ODMメーカーや、海外工場に相談するやり方もあるでしょう」(井部氏)というご説明がありました。
2回に亘る熱量の高い講義は、「あなたはどんなニットを作りたいのか?やりたいことを明確にし、そこから逆算をし、省くことは省き、追求することは追求していきましょう」(井部氏)という言葉で締めくくられました。当セミナーをきっかけに、受講者の皆様の商品企画にニットが加わり、商品内容がレベルアップすることを期待しています。
