ZoomUpフレンズ
代表者 | 西村和弘 |
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創業 | 2000年 |
住所 | 東京都小金井市中町1-7-29 |
ホームページ | http://www.anything.ne.jp/ |
事業内容 | 日本の仕事着「前掛け」を専門に企画・製造・販売をする、日本で唯一の前掛け専門店。 愛知豊橋の職人さんたちと糸から創る、特製のオリジナル『前掛け1号帆布』は日本国内だけでなく、アメリカ・ニューヨークをはじめ各国で評価されている。 |
自営業を営む父親の影響もあり、小さいころから独立を考えていたという西村さん。大学卒業後に大手企業に就職しましたが、「人生一度しかないから、誰もやっていないことをして、もっと世の中の役に立ちたい」と感じるようになりました。サラリーマン時代の自分は社員数千人の中の一人。なかなか世の中の役に立っている実感が湧きづらい組織だったといいます。
入社から5年後、脱サラを決意し北千住に事務所を構え、原宿などでの路上販売からスタートします。創業当初の商品は漢字Tシャツでした。学生時代の留学を経て、日本の良さを海外に伝えていきたいという想いがあったのです。
事務所を国際ファッションセンターに移転し、近所の問屋さんで偶然出会ったのが日本伝統の仕事着「前掛け」でした。無地の前掛けが売られていたのを見て、Tシャツと同じようにプリントして売ったら面白いかも…と考えたのが始まりだったのです。オリジナルの前掛けをHPに載せると注文がくるようになり、「オーダーで作れる」ことを打ち出すと更に反響がありました。Tシャツよりも確かなニーズがあることを実感します。Tシャツは「どこにでもある」が、前掛けは「他にはない」ことを確信したのです。
その後、西村さんは日本に唯一残る前掛けの産地・愛知県豊橋市を訪ね、職人さんたちと出会います。伝統ある職人の技と年代物の織り機によって作られる「本物の前掛け」にすっかり魅せられ、本格的に「前掛け専門店」を立ち上げました。その日から「前掛けの需要を広げること」と、「製造業を未来へ残すこと」が西村さんの使命となったのです。
前掛けの需要は時代の流れとともに減少し、職人の高齢化も進み、跡取りがいないのも問題となっていました。もっと前掛けの良さを知ってもらい、個人のお客さんにも気軽に前掛けを楽しんでもらうにはどうしたらいいのかを考え抜き、オリジナルの文字をプリントできるようにしたのです。
西村さんの新たな試みは、初めのうちは職人たちも簡単には受け入れてくれなかったといいます。そこで西村さんはとにかくお客さんの反応を職人たちへ伝えるようにしました。どんな人が買っていて、どんな風に使っているかなど、時には写真を見せて報告するようにしたのです。顧客の反応と職人の技を互いに見ることができるイベントや展示会も積極的に行ないました。次第に前掛けのファンも増え、同時に職人たちも協力的になっていったといいます。
また顧客企業・職人・工場・インクメーカーなどとのやりとりは西村さん自身が必ず直接顔を合わせて行なうようにして信頼関係を築いていきました。そうしたフェイス・トゥ・フェイスを大切にする経営の仕方は、クリエイティブスタジオ在籍時に墨田の経営者さんたちから多く学んだといいます。「墨田での経験がなければ、前掛けとの出会いも今の自分もなかった」と西村さんは言い、現在でも墨田との交流は続いているそうです。
職人との信頼関係を築いた西村さんは、買い手と作り手の橋渡しを器用にこなしながら、前掛けの魅力を発信し続けます。
時代が変わりニーズが無くなっていくなかで、伝統技術を絶やさないためにすべきこと。それは前掛けの本質的な良さ(腰を守ったり、怪我を防止する役割がある)はそのままに、現代にフィットする売り方で、その魅力や使用機会を具体的に提案していくことでした。そうすることで着実に需要は増えていったそうです。オリジナルプリントやオーダーメイドでギフトの需要は激増し、日本食ブームに湧く海外の飲食店への提案も順調です。今後はガラス工場など危険な作業を伴う仕事のユニフォームとしての提案など、まだまだ需要を広げられる余地はあるといいます。
需要が広がると同時に、作り手(職人)は自分の技術がどれだけ役に立っているか、喜ばれているかが実感できるようになります。その実感が湧くと元気が出てきます。作り手が元気になると、新たなニーズに応えようとしてもっと良い商品が生まれます。今の時代、商品だけでなく仕事の内容も「量より質が大切」と西村さんは言います。西村さんの仕事は買い手と作り手を繋いで、みんなが元気になる仕組みでできているのです。
今後はTシャツやバッグなど商品の幅を広げることは考えていないのですか?と尋ねると、西村さんは「考えていません」ときっぱり答えます。実はこれまで色々と試してみたそうですが、必ず原点(前掛け)に戻ってきたといいます。Tシャツなどは瞬間的には売りやすいですが、売り手も多く、買った側も時が経てば商品が記憶に残りません。しかし前掛けは5年も10年も使い続けられる上に必ず記憶にも残ります。オンリーワンのものに携われることが西村さんの原動力でもあるのです。
欲を出して商品の幅を広げようとすれば、前掛けの魅力がブレてしまいます。一途に前掛けの魅力を発信し続け、深みを増していくことでメディアから取り上げられることも増えていったといいます。
西村さんの使命はあくまで「誰もやっていないことで世の中の役に立つこと」であり、それは「前掛けの需要を広げることと製造業を未来へ残すこと」なのです。道のないところに道を作ることは大変だけど、その分やりがいも大きいといいます。これからもフェイス・トゥ・フェイスを大事にして進み、いつか振り返ったときに自分の作った道ができていればいいと語ってくれました。
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