ZoomUpフレンズ
代表者 | 髙橋正実 |
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創業 | 2001年創業 |
住所 | 東京都墨田区向島3-3-1チューブマンション1101号室 |
ホームページ | http://www.masamidesign.co.jp/ |
事業内容 | コンセプトワークを得意とするところから、グラフィック、パッケージ、プロダクト、インテリア、空間、CI、ブランディング、コンサルティング、グランドデザイン、地域開発、素材・技術開発、科学研究分野、執筆等多岐に渡り、分野を超えたスタイルで仕事を行っている。 |
大江戸職人展―大黒柱ー (2008年)
KFC: 高橋さんのデザインを墨田でたくさん目にするようになりました。
高橋さん: スカイツリーのエレベーター、墨田区内循環バスの「すみまるくん」と、「すみりんちゃん」、そして、墨田区観光協会や墨田区伝統工芸保存会のロゴなどがあります。
すみだブランドの認証審査会の委員や推進委員会理事会にも関わらせていただき、皆さんの目に触れる部分で墨田のことにも関わる機会が増えているのかもしれません。
KFC: 昨年には豊橋技術科学大学のマレーシア、ペナン分校の開設行事に行かれたそうですが、どのような経緯だったのですか?
高橋さん: 豊橋技科大は顧問デザイナーとして関わらせていただいております。国立大学において顧問デザイナーというのは初めてとの事です。技科大の榊佳之学長(2013年文化功労者)はゲノムの研究で有名な方で、日本そしてアジアをものづくりの拠点として考えていらっしゃいます。留学生も多く、ものづくりの活性化に熱心な大学です(学校名も科学の前に技術がつきます)。それで、2013年にペナンに分校を開校した際にご依頼をいただき、開設式典に出席しました。
KFC: 顧問デザイナーになったきっかけを教えてください。
高橋さん: 豊橋技科大とのご縁は、視覚脳の研究をされている中内先生から講演の依頼を受けて、日本のものづくりの可能性の話をして意気投合したことがきっかけです。ものづくりが活性化し、日本が元気になるにはどうすればいいかということを小さいころから考えていたんです。
KFC: 顧問デザイナーとして、どのようなことをされているのですか?
高橋さん: 技科大では顧問デザイナーとして、大学の「見える化のお手伝い」をしています。校舎のサイン計画やオープンキャンパスのポスター、シンボルとなる渡り廊下のデザインなどです。今後大学でどんなことをやっていくかのさまざまなアイデアも出したりしています。半分はモノのデザイン、半分はアイデアを出す仕事と言っていいと思います。
「工場へ行こう!!」(2008年)
KFC: 高橋さんのアイデアはどんな時に生まれるのですか?
高橋さん: いろんな方からよく聞かれるんですけど、社会のことを考え、たくさんの人に会いその立場に立って考えます。未来を創造するだけでなく、過去のことも勉強して、過去と未来をつなぐ現在を、発想していきます。また、その基準は、自分は社会としての判断の中にあると考え、分野にこだわらずに、社会としての判断をします。社会の問題解決の手段としてデザインし、多くの人のためになる未来をつくっていこうと考えます。
KFC: デザインの分野がとても広いように感じますが、その源泉はなんですか?
高橋さん: 私は様々な分野のデザインをやってきているのですが、いつもデザインを社会の為として捉えているので、突拍子もないアイデアというものはないんです。10代の頃から、工場のもつ技術力と新しい発想によるものづくりの可能性をアイデアとともに工場へ届けていました。墨田で生まれ育ったこともあり、周りにものづくりの現場がたくさんあったんです。その後は知り合いの工場を訪問して雑誌「デザインの現場」で連載を重ね、書籍『工場へ行こう!!』(発行:美術出版社)が出版されました。多くの皆さんにものづくりの可能性や未来を創造することの視点を持っていただくことのきっかけとなればと想っていました。
KFC: 創業してから、苦労したことはありますか?
高橋さん: KFCクリエイティブスタジオにいた頃は、若くて女性であるが故に、信用がなくコピー機ひとつ借りられませんでした。仕事はたくさんあるのに、引き受けてくれる印刷屋さんがなくて。学校で聞いて教わった通り、大手の印刷屋さんに頼んでも、相手にしてもらえなかったんです。代わりに地元の印刷屋さんに頼んだら、引き受けてくれて。ありがたい事だと思いました。
KFCクリエイテイィブスタジオを卒業する時に、墨田区の担当者さんに「ここを出たら何をやりたいの?」と聞かれ、「墨田区に恩返しをしたい!」と答えると、その方は涙をためて喜んでくれました。今でも本当に感謝しています。
KFC: 卒業後はどのように?
高橋さん: 卒業後はここ向島のマンションをオフィスにして仕事をしてきました。
デザインはプロダクツから、パッケージ、ポスターなど、コンセプトワークまで、多岐に渡ります。また、企業や各種業界団体からの講演やデザイン学校や一般大学でも講義の依頼も多いです。
スカイツリーエレベーター(冬)
KFC: 最近では東京スカイツリーの展望エレベーターのデザインが知られています。基本コンセプトデザインで、SDA賞(日本サインデザイン協会賞)を受賞されましたが、苦労された点などありますか?
高橋さん: 東京スカイツリーのエレベーターでは、全体の基本コンセプトとデザイン監修を担当しました。エレベーター4基(春、夏、秋、冬のデザイン)のうち、冬のデザインがオール墨田で作ったものです。この仕事は依頼をいただいたときから、4基全て墨田の技術を活かしてやりたいという想いがあったのですが、クライアントと自分の想いをかたちにすることと、現実的にできることとのギャップが大きく、進めていく上でとても苦労しました。
SDA賞はデザインの賞なので、デザイナーが個人的に喜んでもいい部分もありますが、この仕事はデザイナーだけでは成り立ちません。クライアントはもちろん、ものづくりの現場の人たちや関わった皆さん全員の分の賞状をいただきたいと強く思いました。
KFC: 高橋さんのお仕事は『ものをデザインする』という概念にとらわれず、コンセプトワークやアイデアに重点があるようにみえますが、実際は?
高橋さん: デザインはモノを作ることのみを指すのとは違います。10年程前に車のデザインをしたことがありますが、クライアントから求められたのは、「格好良いデザイン」などではありませんでした。自分は車に詳しいわけではないのですが、『移動するという概念』としてのデザインに対して、アイデアを求められました。
KFC: 日本ではアイデア自体に対して評価や対価を払う意識が薄いように思えますが、海外での活躍は考えていないのですか?
高橋さん: その『移動するという概念』に対してのアイデア、そしてデザインも、日本では実現できなくてアメリカにアイデアが渡ってしまい、手を離れることになってとても残念でした。後でアメリカへ来ないかという話もありましたが、自分は日本の社会のために取り組みたいと考えています。それに、個人的に会社を大きくしたいという考えもないんです。
大企業からも小さい企業からも依頼をいただきますし、最近は、国の委員会へのお話もいただきます。私にとってビジネスの規模の大きさは関係なく、私自身はデザインという形で日本の社会、そして未来を活性化することが目的であり大切なことなんです。
【インタビューを終えて】
高橋正実さんは成田国際空港の出発ロビーの壁面デザインでも知られており、幅広いデザインの要請にすべて応える姿勢を持っています。地元墨田のために、日本のために、そして海外に展開する大学のために、ものづくりで元気にするデザインをと奮闘されています。ご自身の活躍分野に枠をはめずに、どんな要請にも応えようとしています。IFI(ファッション産業人材育成機構)マスターコースの講師も毎年引き受け、後進の指導にも熱心です。高橋さんの考える社会の課題解決のデザインが広がることを願っています。(坂田)
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